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1.インド経済概況 (2006年7月17日作成) 経済のパートでは、産業や施策などインド経済に関するさまざまな状況を記していくことにします。今週は経済の第一回目として、インドのマクロ経済状況についてまとめておきます。 インド経済は、1991年の経済自由化路線への転換以降好調さを保っています。GDPは2004年で第12位と、OECD非加盟の途上国の中では中国に次ぐ経済規模です。また物価水準を考慮した購買力平価(PPP)ベースでは、米国、中国、日本に次ぐ第4位の水準にまできています。 経済成長率では経済自由化以降、年平均6%を超える成長を達成し、2003年以降の実質GDP成長率は8.5、7.5、8.4%と高成長を維持しています。外資の導入は続いており、生産人口の増加を考えても、今後この成長は続いていくと思われます。 貿易面では、輸出額でインドは31位で、輸入でも25位と低水準にあり、貿易収支は一貫して赤字です。一方ソフトウェアや世界中の印僑からの送金など、サービス取引は大きな黒字を維持しています。総合してインドの国際収支は黒字で、外貨準備高は96年以降、毎年増大を続けています。つまりインドの経済構造は、サービス業が中心となっています。製造業は中国ではGDPに占める比率は52%であるのに対して、インドは27%です。逆にサービス業など第三次産業は中国の32%に対してインドは51%です(2003年)。このようにモノよりも、サービス取引が中心となっているのがインドの特徴です。 このようにインド経済の好調さは、輸出依存でなく主に国内需要に起因しています。経済発展に伴う所得水準の向上で、購買力のある中間所得層が大量に出現しており、都市郊外には大きなショッピングセンターが造られ、自動車や電化製品などの消費財市場は伸びています。一方消費者物価上昇率は、2004年が6.4%、2005年が5.6%と安定しています。これは政府が選挙対策として物価上昇率を抑えるように努力してきたことが影響しています。 内需のもうひとつの柱である投資についても、政府主導のインフラ投資に加えて外国企業による投資が旺盛で、資本収支は大幅な黒字です。インドに対して幅広い業種で、新規投資や既存拠点の拡充を検討する企業が増えています。 加えてインドの経済やその将来性を見るうえで重要なことに、人口構成があります。現在でも10億を越えるインドは、国連の予測で2030年時点でインドの人口は14億5千万人と中国を上回り、15歳未満の若年人口はこの時点でも23%と、中国の17%よりかなり高くなることが見込まれています。 このような状況で株式市場も活況を呈しており、代表的な株価指数であるSENSEX指数で2003年の3月末では3,115だったものが、今年5月には12,000を超えるなど大きく上昇しています。英有力ファンドマネージャーなどはこのような状況を、今後10年間にわたる西洋から東洋へと富がシフトしていく過程の中の現象であるとの見方を示しています。 ただインドのネガティブな経済指標としては、大きな財政赤字の問題があります。2004年度で財政赤字の対GDP比は4.0%あり、改善傾向はありますが依然として大きな水準です。 国全体では高成長を続けるインドですが、一人当たりの所得水準はまだ低水準にとどまっています。一人当たりのGDPは2004年時点で622ドルで、これは中国の半分です。さらに主要都市で比べると、上海、広州などでは一人当たりGDPは4,000ドルを超えている一方、インドでは首都デリーでさえまだ1,000ドル程度にとどまっています(2004年)。この都市部の差がインドにおける高級品市場を限定的にしており、汎用品が主体の市場にしています。このことを軽く考え、富裕層にターゲットを絞った戦略で失敗した日本企業も多くあります。 このようにインドの経済は、民主主義が貫かれている政治状況ともあいまって、安定して成長していることがわかります。今後も増加する中間層による消費やインフラ投資の拡大、ソフトウェアなどでのグローバル拠点としての重要性などにより、さらに大きな将来性が見込まれます。 |
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