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5.インドの自動車業界 (2007年7月16日作成) 今回は成長著しい、インドの自動車業界について記します。 インドの自動車市場は、中間層の増加により爆発的に拡大しています。06年度の国内乗用車販売は、前年度比20%増の140万台規模に達し、01年からの5年間で2倍以上になっています。それでも自動車の普及率は03年時点ではまだ1%もない水準で、今後の市場拡大の余地としては、相当大きなものがあります。乗用車販売台数は2010年に200万台を突破し、2020年には500万台に達すると見込まれています。 インドには1930年代にGM、フォードが進出していました。しかし1947年のインド独立後、インド政府は輸入代替政策を進め、部品国産化を進めていく政策をとりました。そのためインドの自動車産業は、政府の保護政策の下、寡占体制となり、ヒンドスタン・モーターズの「アンバサダー」とプレミア・オートモビルズの「パドミニ」がほぼ市場を独占し、モデルチェンジもない、完全な売り手市場となりました。 こうした中で、80年代に入り政府は国民車開発構想を打ち出し、スズキが26%出資して81年にマルチ社が設立されました。これはフォードとGMが撤退した54年以降で初の外国メーカーの参入でしたが、当時は無謀とも受け止められていました。しかしスズキは大成功を収め、現在ではスズキの出資比率も100%になっています。 その後91年以降の自由化政策の中で、1993年には自動車会社に外資の過半の出資比率が認められるようになりました(現在は100%出資可能)。それにより、94年以降大宇、GM、ホンダ、現代、フォード、そして97年にトヨタと次々とインドに現地法人が設立されていきました。 2006年度のインドの自動車市場のシェアは、日本のスズキが46%でダントツのトップで、以下タタ自動車の16%、韓国・現代自動車の14%と続きます。スズキの強みは、人口5万人程度の地方都市も網羅する販売拠点の多さであり、そこの購買層にも対応する安価な小型車が主力である点です。スズキは今後3年間で2000億円を投資し、インドでの自動車生産台数を現在の年産63万台から100万台近くにまで引き上げることを計画しています。 インド自動車市場の主戦場は、乗用車販売全体の9割弱を占める、排気量800-1000ccの小型車で、売れ筋は20万ー40万ルピーの価格帯です。昨年3月には、1200cc以下の小型車には、物品税が16%から8%に下げられたこともその追い風となっています。 この市場にはインドのタタ自動車が2008年に「3000ドルカー」を発売する計画を表明しており、日産のゴーン社長も先月、インドで価格が3000ドル程度の超低価格車の生産・販売を検討していることを明らかにしました。またトヨタも2010年をめどにインドで80万円程度の車を出す計画にしています。 一方05年に発売したスズキのスイフトは、最量販車種「アルト」の倍となる50万ルピーですが販売好調です。インドでは乗用車の買換え需要もでてきており、プレミアム・コンパクト市場も育ってきていることが見て取れます。 この点でホンダは競争の激しい小型車市場を避け、今後増えてくる富裕層をターゲットに高級路線をとっており、インドで販売している最も安い車のシティで67万ルピー、最も高いアコードで170万ルピーという価格帯です。 インドにおける自動車工場は、南部チェンナイ、西部プネ、北部ニューデリー近郊に集積しています。相対的に市場が小さな東部には立地がありません。 南部にはチェンナイに現代とフォード、バンガロールにトヨタが進出し、日産もチェンナイに進出予定です。プネ周辺には、GM,タタ、マヒンドラやダイムラーが進出しています。北部ニューデリー周辺にはスズキとホンダが進出しています。 インドに新規参入が相次ぐ背景には、国内市場の急成長に加えて、欧州や中東、アフリカなどへの小型車の輸出拠点としても有望視されていることがあります。インドの2006年度の輸出実績は17万6000台と、02年度の3倍に膨らんでいます。これは生産技術や部品メーカーの集積が進んで、インドの自動車工場が輸出に見合う実力をつけてきたことの証明です。04年の輸出実績で見ると、インドの乗用車輸出の57%は欧州向けで、アフリカ向けが15%となっています。スズキや現代は、今後インドからの輸出を拡大させていくことを表明しています。 |
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