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8.インドの鉄鋼業界 (2008年5月5日作成) 今回は活況の鉄鋼業界についてです。 インドの鉄鋼業界は、オランダのロッテルダムに本社を置く世界最大のミタル・スチールの創業者で社長のミタル氏がインド人であることや、タタスチールが英国のコーラスを買収するなど、世界から注目を浴びている状況にあります。 インドの鉄鋼産業は、独立後のインドが採用してきた輸入代替工業化政策により、国内産業が保護を受けてきました。この政策で価格の統制などにより国営企業が優遇されてきたこと、生産能力の拡大が重視されたことで、技術の向上はずっと置き去りにされてきました。その結果インドの鉄鋼業は80年代まで停滞し、生産性は低く、国内需要を満たす生産ができない状況が続いてきました。 経済自由化前の1990年の時点では、国営企業以外では大規模な民間企業はタタ・スチール一社のみで、他は約180に及ぶ小規模企業が占めているような状態でした。 こうした状況にあって90年代の自由化政策の下、鉄鋼業界に対する規制の撤廃が相次いで実施され、さらに外資導入の奨励や輸入関税の引き下げも実施されたことで、投資や最新技術の導入も進むようになってきています。現在インドではタタ・スチール、ミタル・スチールにくわえ韓国ポスコも製鉄所の建設計画が動いています。 最近のインドの鉄鋼産業は、インド経済の好調、インフラ整備政策などもあり空前の好況にあります。インド国内の粗鋼生産量は、2005年の3800万トンから200年には5071万トンに増加し、ドイツを抜いて世界第五位の生産国になっています。さらにインド政府は2005年に発表した「国家鉄鋼政策」で、2019年までに粗鋼生産量を1億1000万トンにまで引き上げる(うち輸出量2600万トン)、との目標を置いています。 ただこの状態にあっても、国営のインド鉄鋼公社SAIL(Steel Authority of India Ltd.)やRINL(Rashtriya Ispat Nigam Ltd.)社は十分に健全な状態といえる状況にありません。インド国内で国営企業の生産シェアは1999年度で50%でしたが、2005年度には41%にまで低下しています。 インド鉄鋼業、中でも国営企業が抱える問題は生産性にあり、90年代後半には稼働率が90%の水準に達しましたが、赤字でした。これはSAIL社の、粗鋼生産能力1200万トンに対して、雇用者数10万人という国際的にかなりの過剰人員体制に問題がありました。そのためSAILでは退職勧奨制度などを利用し、90年代の後半から人削減を実施してきています。 一方民間のタタ・スチールは業績好調で、2007年には英コーラスを買収して世界代5位の製鉄会社となりましたが、さらに東南アジアのナットスチールやミレニアムスチールの買収など、攻めの姿勢を続けています。また新日鉄との提携、合弁なども進めています。 現在のインド国内のシェアを見ると、鋼板ではSAILが38%、タタが18%、そしてエッサールスチール(15%)、ジンダル社(13%)、そしてイスパット社(12%)などとなっています。また条鋼類ではRINL(16%)、SAIL(15%),タタが(8%)と大手業者の比率は下がり、残り61%は中小規模生産者に分散しています。 インドの鉄鋼貿易は、2005年度で輸出が400万トン、輸入が150万トンで出超となっています。輸出入とも鋼板類がほとんどで、輸出先はEU,米国、中国、輸入先はEU,ロシア、韓国、日本などとなっています。 しかし今年3月には、インフレ抑制のためのインド政府の国内への安定供給策に協力し、インドの鉄鋼業界もインド国内での需給ひっぱくに対応して、新規の鉄鋼製品輸出を停止することを決めています。 インドの鉄鋼業は、国内経済の急速な成長もあり、今後一層発展するとみられています。 ただそのために解決しなければならない問題もあります。インドは鉄鉱石に豊富な埋蔵量があることは強みですが、石炭についてはインドで産出される石炭の多くは品質の点で輸入炭とブレンドする必要があり、輸入炭の価格高騰の影響を受けることがあります。第二に鉄道や道路輸送の点でインフラが十分整備されてなく、納期に影響すること。そして第三に電力の供給が不安定かつ高価である点があげられます。これらの問題にうまく対処していくことが、国家鉄鋼政策目標の達成のかぎを握っています。 |
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