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4.マウリヤ朝の古代インド統一国家 今回はインドの歴史の4回目で、紀元前300年ごろ北インドに強大な国家を築いたマウリヤ朝のインド統一国家について示します。 紀元前317年、始祖チャンドラグプタがナンダ朝から政権を奪って王位につき、マウリヤ朝を建てました。 チャンドラグプタはガンジス川流域の覇権を握り、西北インドを征服してアフガニスタンにまで進出しました。そしてさらに北インドから南インドへと領域を広げ、インド統一を実現して、古代帝国を完成させました。 この南インドを征服したのはチャンドラグプタの息子ビンドゥサーラで、そのビンドゥサーラの息子は有名なアショカです。 アショカはダルマ(法)の政治を実践し、その政治理念を述べた詔勅は石柱などに刻まれ、北はガンダーラから南はカルナタカまで、東はオリッサから西は現アフガニスタンのカンダハルまでの広大なインド亜大陸一帯で発見されています。 マウリヤ朝の政治経済の基盤はガンジス川流域平野部ですが、インド南端を除く広大な一帯を領土としていました。 マウリヤ朝はインド史ではじめて官僚制度を整備し、軍隊と官吏の組織を整えました。その官吏の組織構築に貢献したのが、チャンドラグプタの側近であったカウティリヤが著した「実利論」です。 インドでは古来からダルマ(法)、アルタ(実利)、そしてカーマ(享楽)が人生の三大目的とされてきました。実理論はこのうちのアルタ(実利)の立場から、権力を揺ぎないものとするために王が採るべき権謀術数を説いたもので、王としてのあるべき姿、大臣や官僚の選び方、権謀術数の方法、城砦や都市の作り方、税金の基準、戦争・外交の方法、農業・林業・漁業の指導法などについて、多岐にわたって詳細に説明した大著です。日本では岩波文庫からでています。 マウリヤ帝国の基盤はガンジス川中流域で、そこは当時世界で最も進んだ農業地帯のひとつでした。その要因のひとつに、マウリヤ帝国はガンジス川中流域の感慨事業に力を注ぎ、感慨によって人心の掌握を図ったことがあります。それが現在では、ガンジス川流域の西ベンガル州やビハール州などの地域や、オリッサ州やアッサム州で灌漑の普及が遅れている状況にあります。そのため今でも乾季に水を供給し生産を上げることができず、6-9月のモンスーン期にはガンジス川は氾濫してしまいます。今でもインド経済に大きな影響を与える農業が、モンスーンなど天候次第という状況にあるのは、この歴史がありながら皮肉なことです。 アショカ王の政治理念とその実践はインド史の中でも独特で、きわだったものでした。中でも彼は、古代インドにあって仏教を守護した王として有名です。 王の碑文によると即位後のカリンガ戦争で多くの兵士が死に、戦争の悲惨さを反省した王は、武力による征服をやめ、ダルマ(法)の政治の実現を決意したと言われています。ダルマはヒンドゥー教でも仏教でもきわめて重要な言葉で、王の詔勅碑文によれば、ダルマは正しい心を持つことであって、心を清浄にして平静を保ち、生物を殺さず、争いをおこさず、寡欲にして節制し、あわれみの心を持つこととされています。 アショカ王はブッダ誕生の地ルンビニを訪れ、そこにも石柱を立て、碑文を刻みました。この碑文により、釈迦が伝説上の存在ではなく、歴史上実在したことが認められるなど、仏教の歴史の解明にかかせない貴重な資料になっています。五木寛之さんが最近出版した「21世紀 仏教への旅 インド編」では、この付近のブッダが歩いた道をたどっています。 またアショカ王の石柱には、インド国旗にも使われているチャクラと言われる車輪が刻まれています。車輪の中の24本の線は1日24時間を表わし、ヨガの身体観においては体の中のエネルギーの集結部とされています。 アショカ王は仏教を擁護しましたが、王の意図は宗教徒間の争いを抑制することにあったことから、チャクラは多宗教・多民族の団結を象徴し、ガンジーによりインド独立の象徴とされています。 アショカ以後マウリヤ朝は急速に衰え、紀元前185年に軍司令官によって滅ぼされてしまいました。それにはアショカのあまりの仏教の保護と、それに対するバラモンの反抗があったとされています。 |
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