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【インドをよく知る】


2) 歴史


7.1500年代以降のムガル帝国の時代


 前回は12世紀末頃から続くムスリムのインド支配について記しました。今回はムスリムの支配が続いていたインドで、16世紀前半からのインド史最大のイスラム王朝ムガル帝国の成立までの状況について記していきます。


 ムスリムのインド支配が始まって、13世紀はじめには奴隷出身の武将がデリーに政権を樹立し、奴隷王朝と呼ばれました。この奴隷王朝以来ムガル帝国以前の320年間の五王朝は、デリーを都としました。このデリー諸王朝は異民族の征服王朝でした。一方それら異民族がもともといた中央アジアやアフガニスタンはモンゴルに占領されてしまい、それら王朝のムスリムの支配者は、インドに定着して生きていかざるを得ない状況となりました。

 このころの13,14世紀はモンゴルがアジアを席巻した時期で、中央アジアや西アジアのムスリム国家は滅ぼされたので、インドがアジアで唯一のムスリムが支配する国家となりました。インドを支配した王朝は、奴隷王朝以降はトルコ系でしたが、14世紀にはアフガン族が優勢となり1451年にはアフガン人のローディー朝がデリーの王権を獲得しました。


 次にここで、15世紀末から始まったポルトガルのインド進出についてふれておきます。1498年ポルトガルのヴァスコ・ダ・ガマが、南アフリカの喜望峰を回ってインド西海岸のカリカット(コルカタ)に到達し、ヨーロッパ人として始めてインド航路を開拓しました。

 その後もポルトガルは引き続き何度も船隊をインドに派遣し、香料貿易で巨利を博しました。それまでこの海上貿易を独占してきたムスリム諸国はポルトガルと戦いましたが敗れてインド洋の制海権を失い、代わってポルトガルが海上帝国を築いていくことになりました。

 ポルトガルは1501年東海岸のゴアを奪い、そこにインド総督を置いて海上帝国の中心とし、アジア貿易の監督と植民地の行政を行いました。ポルトガルはカトリックの伝道にも力を入れ、ゴアでもインド人にカトリックへの改宗を強制しました。それで今もゴアにはクリスチャンが多く、街ではサリーよりもスカート姿の女性のほうが圧倒的に多く見られます。


 話をインドの王朝の話に戻します。

 1526年ムガル朝バーブルはデリーの北のパーニーパットでローディー朝の大群を破り、デリーとアーグラを占領しました。バーブルの父方の5代前のチムールはモンゴルから中アジアに移ってチムール朝を興した人でした。母方はチンギス・ハンの13代の後裔と言われます。ムガルとはペルシャ語でモンゴルを意味します。バーブルはチムール以後5世代を経るうちにイスラム化していました。

 彼は中央アジアで頭角を現しましたが、ウズベク族との戦いに敗れて南下し、1504年にカブールを支配し、その後来たインドに進出しムガル帝国を建設しました。そして東インドにも進出しましたが、デリー占領の4年後に没しました。

 バーブルの子フマユーンの時代にはビハールをとられるなど領土を減らして、その子アクバルにムガル朝の再興が委ねられることになりました。


 アクバルは即位後北インド一帯をあいついで征略し、皇帝の権力も強化して、中央集権的な統治体制を築いていきました。

 その後もアクバルはガンジス、インダス川流域とカブールを確保し、ついで海上貿易と綿織物業で知られた豊かなグジャラート、そしてアフガン勢力が長い間支配していたベンガルを併合し、カシミールにも勢力を及ぼして北インド一帯を統一しました。またその後は南方のデカンで、分裂していた諸国も平定しました。そしてインド最南部を除くインド亜大陸を支配するに至りました。


 アクバルは農作物に対し合理的な徴税方式を導入し、貨幣で徴収しましたがかなりの重税だったようで、農民たちは貧困に苦しめられました。しかしガンジス川流域などで生産性の高い作物の栽培や、荒地の開墾がさかんにおこなわれて、耕地面積や農業生産も増大し、それに伴い人口も増加しました。また宗教政策においては、大多数を占めるヒンドゥー教徒に留意し、ヒンドゥーにはきわめて寛容な政策をとりました。

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