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【インドをよく知る】


(1) はじめに(インドという国は...)


2.現れる大国インド


 欧米企業のインドへの関心は、極めて高いものがあります。では、なぜこれほどまでインドが注目をあびているのでしょうか?


 日本人にとって、インドのイメージはターバン、蛇使いとカレー程度で、なんとなく貧しい国というイメージがずっとありました。そして心理的にも遠い国でした。
 

 私はオフショア・アウトソーシングを通じてインドにかかわり、日本の顧客にインドとの取引を勧めて5年以上になります。しかし、「インドはいかがでしょうか?」と言うと、最初は全く想定してなかったという反応や、「中国との取引を軌道に乗せるのに手一杯で、インドまではとても手が回らない。」といった反応がほとんどでした。つまり当時製造拠点としての中国シフトはブームでしたが、インドはまるで眼中にない状況でした。

 しかし昨年あたりから、さすがにこの流れに変化が生じてきました。それは、中国の反日で、中国一極集中のリスクが認識されたことなどもありますが、インド自体が持つ潜在力が認識されてきたことがあります。


 最近インドの経済成長率は6−8%で、中国をやや下回る状況で推移しています。それが今後中国を上回るようになり、世界で最も高い成長率を達成すると見られています。その理由としてまず第一に、若年人口の圧倒的な多さがあります。インドの人口は、03年時点で10億6,400万人で、その半数以上は25歳未満です。逆に中国では一人っ子政策の影響で高齢化がすすみ、30年後には減少に転じると見られています。

 またインド全体の国民所得は540ドルで、世界159位と低いのですが、3,000ドル以上の中産階級が1億5,000万人と日本の人口をすでに上回っており、これが今後10年でさらに14倍に増えるとされています。この増えつづける中産階級が、その市場としてのインドの魅力を高めています。


 このようなインドに経済的な成長をもたらし、インド自体の市場性が注目されるほどに伸びてきたきっかけとなったのは、1990年にさかのぼります。

 独立以来インドは社会主義的計画経済を指向し、非効率と官僚主義がインド経済を苦しめてきました。財政赤字、経常収支の赤字が膨張し、1990年には国家としてデフォルト(債務不履行)寸前にまで追い込まれました。この状況で成立した国民会議派のナラシム・ラオ政権は、エコノミストで現首相のマンモハン・シン氏を財務大臣に指名し、「新経済政策」を発表しました。この政策は、1)産業許認可制度の撤廃などの規制緩和、2)国営企業の民営化、外資規制の緩和、3)関税引き下げや補助金廃止などの競争政策の導入です。これによりインドは独立以来堅持してきた統制経済を、市場経済へと転換することになったのです。これは中国の改革・開放政策が始まってから13年たった時のことでした。


 この経済の自由化、規制緩和政策に、世界的な経済のグローバル化の流れが加わり、最も成功した産業はソフトウェア産業でした。次回は自由化の道を歩むインドに、IT革命との関係から現状認識へとすすめていきます。

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