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3.巨象目覚める 1991年の経済危機を機に、ナラシム・ラオ政権は新経済政策NEPを発表し、中国の改革・開放政策に踏み切ってから13年、遅ればせながらインドは社会主義から市場主義へ舵を切ることになりました。このことはインドを成長へとつなげる重要なことでしたが、インドが現在のように注目を浴びる状況となったのは、やはりITでの成功がありました。 インドのITでの成功は、ソフトウェア開発の持つ特性と、タイミングがインドの社会的、歴史的背景とぴったり合致してなされたものでした。 まずソフトウェア開発の特性として、製造業などと違い、蓄積された熟練労働力や、有形資産を必要とせず、パソコンと優秀な人間がいれば基本的に成り立つという環境があげられます。 そしてタイミング的にはこの時期アメリカを中心に「IT革命」が進行していた時期であり、同時に経済のグローバル化、オープンシステム化が進んでいた時期でした。このときは50年代から始まった米英を中心とした先進国への移住が、90年にはインド系アメリカ人が100万人を超える規模にまで達していた時期でした。彼らはもともと数学、工学や論理的思考に強い上に、教育熱心で、高い知識を有していたことで、アメリカのIT革命においても中心的な役割を果たすことにになりました。 さらに90年代のこのIT革命は、インターネット化、WWWの登場で、通信コストの低下や、大量のデータの高速でのやり取りを可能にしました。このことが、人件費など生産コストの安いところでプログラミングなどを行うオフショアリングを急速に進めることになりました。これがインドに大量の業務が流れることとなり、さらに2000年問題対応で、この流れが一気に進むこととなりました。こうしてこの国境と時間を超えたグローバリゼーションが、ITの分野でインドを世界の舞台へと引き上げることになりました。 またインド政府も、IT革命を利用し、自国のソフトウェア産業を国家の新しい経済産業と位置づけ、国をあげて育成してきました。このIT、ソフトウェア産業は輸出で発展してきましたが、知識や経験はインド国内に蓄積され、インド国内産業においてもIT化が進むこととなり、これが生産性の向上、そして国内需要の喚起へとつながっていく好循環につながっていきました。 このようなインドにおける経済の自由化とIT主導の経済発展の同時進行は、中国などでもみられたこれまでの発展パターンとは異なるものでした。つまりまず労働集約的軽工業、次に資本集約的重化学工業、そして最後にサービス業という従来の発展形態に対して、インドは一気にサービス業へとすすむことによって成長し、その後に製造業の急速な発展や、インフラ整備の段階に入っているのです。 このような発展し、注目されるインドについて知り、我々の今後の戦略に生かしていければというのがこの連載の趣旨です。次回はまずその前に、インドの基礎的なデータを確認しておきます。 |
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