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3.独立以後の国民会議派 今回はインドの政治の3回目で、独立以後のインド国民会議派と60年代までのインドの政治状況についてまとめます。 1906年に自治の達成を掲げて誕生したインド国民会議派は、以後独立要求を強め、1947年ついにインド独立を達成しました。これ以降会議派は、政治権力の運営を担う組織へと転換することになりました。 インド初代首相には、会議派のネルーが選出されました。ネルーは富裕なバラモン・カーストの生まれで、インド国民会議の一員としてマハートマ・ガンディーやチャンドラ・ボースなどと共にイギリスからの独立運動を指導してきました。 その後1951年に実施されたインド第1回総選挙では、会議派は74.4%もの議席を獲得しました。州レベルでも会議派政権が多数を占め、ネルー会議派政権が続いていきました。 会議派はその後も引き続き国民の支持を得て、1957年の第2回総選挙で75.1%、1962年の第3回総選挙でも72.9%の議席を得ました。 この頃のインドの政党の状況は、日本のかつての自民党の長期政権の時代と同じような状況でした。すなわち圧倒的な勢力を持つ会議派と、政権交代の可能性のない小さないくつかの政党が、批判政党として位置するという状況でした。批判政党は、会議派に対し常に批判と圧力を加えていく役割です。 一方会議派の内部には、これも日本の自民党と同様にさまざまな派閥があり、派閥間で政策論争や権力闘争が繰り広げられてきました。 独立後のインドで議会制民主主義が存続できた要因として、このような政権交代のない状況下で、会議派による一党優位の体制の定着もあげられるでしょう。 会議派はこの大きなインドで全土から広く支持を得てきたために、各地方の現権力構造に適応し、順応し、それらを寄せ集めて広くまんべんなく政策を実行することになり、ドラスティックな改革はほとんどできませんでした。 会議派は、政治を通じて獲得される無数の利益を介して、人々を支配し、指示を得るといった利益誘導型の政治を行っていきました。このとき利益を享受できたのは、各地方の農村エリートや支配力を持つカースト集団などでした。ただ支配カーストも村落レベルではひとつでも広い範囲で見るといくつもあり、この各集団間で富や権力をめぐって争いがありました。また農村エリート集団も派閥間抗争や内部抗争などがあり、特定の階級支配があったわけではありませんでした。このように小さくて広範な支持層が、会議派の支配をマイルドな統治とさせていったのでした。また広範囲な支持基盤に対応した会議派内派閥間の権力闘争が、政党内の権力抑制要因として作用し、独裁体制となるのをを排除してきました。またこの派閥間の権力闘争は、会議派の活力の源泉ともなりました。 このようにインドの政界を支配してきた会議派ですが、60年代初めからは会議派への支持にもかげりが見られるようになりました。1962年の中印国境紛争における大敗北も、この支配構造に影響を与える結果となりました。中印国境紛争は、中印間の国境の解釈をめぐって武力衝突となったもので、主にカシミールとその東部地域、ブータンの東側で激しい戦闘となりましたが、中国軍が結局勝利しました。この紛争は、インドが核開発を開始するきっかけともなりました。 会議派への支持が減ってきた理由としては、会議派の現状を追認する姿勢によって、国民の生活を向上させるような経済面でのすばらしい成果をあげることができなかったことがあります。 国民のほとんどが従事する農業分野においては土地改革を進めようとしましたが、実際には土地の再配分はほとんど実現しませんでした。また産業面では、社会主義型計画経済であったために、非効率な公営企業主体で全く国民の期待に沿うような成長はできませんでした。 加えて現在までその影響が残る官僚の許認可による規制や非効率さも、経済発展を阻んでいました。許認可をめぐっては会議派の国会議員や州議会議員などによる政治介入や、汚職の頻発といった問題も起きるようになっていきました。さらにネルーの死後2代目の首相になったシャストリは、会議派内の派閥力学が生んだ妥協の産物で、強力なリーダーシップを発揮できず、改革が実行できるような状況ではありませんでした。 |
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