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6.90年代に入ってのインドの政治状況 今回は90年代のインドの政治情勢について示します。 1991年に行われた第10回総選挙後では、選挙期間中にラジブ・ガンディー暗殺の悲劇が起き、これが会議派への同情を呼び、会議派は辛うじて第1党の座を維持しました。 しかしこの時、これまでの歴代政権のツケでインド経済は破綻寸前の状況に追い込まれていました。ラオ政権は91年7月に、ドラスチックな経済自由化政策となる「新経済政策」を発表することとなりました。中国に遅れること13年のこの市場開放政策は、現在のインドの繁栄の出発点となったのでした。 インドは経済自由化政策を開始してから、順調な経済成長を遂げていきました。しかし一方で、経済的不均衡に対しては成果をあげることができませんでした。 そして次の1996年の第11回総選挙は、90年代に入ってから大転換を遂げつつあるインドの将来を占うものとなり、会議派とインド人民党BJPのいずれが政権を取るのかが焦点となりました。 会議派にとっては、5年間の任期を満了したラオ首相の実績が問われることとなりました。ただラオ政権の間に、証券スキャンダル、砂糖取引問題、電話網入札疑惑などの汚職事件が続発し、その都度会議派の関与も取りざたされたため、会議派の支持率は低迷気味でした。 一方最大野党のBJPは、ヒンドゥー・ナショナリズムを強調して支持を拡大し、ラオ政権への攻勢を強めていきました。マハラシュトラ州では95年に政権参加すると、前会議派政権が米エンロン社と契約した28億ドルの発電所プロジェクトを破棄するなどして、国民のナショナリズム的心情に訴えていきました。ちなみにこの投資の失敗は、後の2001年のエンロン破綻のきっかけになったとも言われています。 またインドでは物価と汚職が国民の投票行動を左右する主因と言われており、BJPは1996年に入ってからの選挙キャンペーンにおいて、会議派の汚職を厳しく追及していきました。 選挙は1996年5月7日までに投票が終わりました。 その結果BJP が161議席で第一党となり、会議派は史上最低だった1977年の154議席をも下回り、連邦議会ではわずか1/4の勢力となる136議席にとどまる大敗北を喫しました。 ラオ首相率いる会議派は経済自由化の成功によって約6%の経済成長を達成し、約2億人といわれる中間所得層にはメリットをもたらしました。しかし残りの6億人以上の貧困層の人々にはなんらの恩恵もなく、都市と農村との格差も拡大したことが不満となって現れたのでした。 その後BJPは経済自由化政策を引き続き拡大発展させ、1998年の第12回総選挙で179議席を得てインド人民党連合政権を組織しましたが、短命に終わりました。しかし翌年の第13回総選挙で堅調さを維持し、ヴァジパイを首班とする連合政権が立ち上がりました。この時BJPは、「偉大なヒンドゥー国家」というスローガンで人々の心をつかみ、古い体質の会議派に代わる新しいナショナリズムの提唱者として大きな支持を得ました。 しかしその後2004年4-5月の第14回総選挙でBJPは、好調な経済情勢を背景に勝利するという予想でしたが、ふたを開けてみると138議席にとどまる敗北となりました。好調な経済の恩恵を得られてないとする農民の離反と、厳しい競争を強いる市場経済への有権者の疲れが背景にあったと言われています。一方会議派は庶民の権利を訴えたラジブ・ガンジーの未亡人ソニア・ガンジー総裁の人気が高く、145議席を得て他の連合勢力とともに勝利しました。しかしイタリア生まれの外国人を首相にできないというBJPの攻撃を前に首班指名を辞退し、代わって同じく会議派のマンモハン・シンが首班指名され、インド首相となっています。 この会議派政権の連立相手は、後進諸階級を支持母体とする各州の中道政党であり、閣外には60議席を獲得した共産党が協力しています。つまり現政権は、優秀な経済官僚、カースト利益を代表する地方政治家、そして左翼が連合した政権と言えます。現政権は左翼政党の顔を立てながらも、基本的に規制緩和、市場開放の政策を続けています。例えば米印原子力協定に対しても左翼勢力は反対の姿勢でしたが、その後同協定実施に必要な国際原子力機関(IAEA)と査察協定のための交渉に入ることを認める、といった具合です。 |
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