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【インドをよく知る】


7) 社会


4.カースト制度


 今回インドの社会・文化の第4回目で、カースト制度の現状について記しておきます。


 カースト制度は、ヒンドゥー社会における基本的な社会構造です。

 カースト制度はアーリア人がインドに侵入した以後の紀元前1000年頃、先住民を支配した際に作られたものです。征服したアーリア人は先住民を支配するために神話を作り、それを基にバラモン教を作り、そしてこれを正当化、制度化していったものとされています。


 カーストは基本的にバラモン、クシャトリア、ヴァイシャ、シュードラの4つに分けられ、その中でさらに細かく分類されています。加えてこの4つのカーストのさらに下に「不可触民」、「ダリット」とも言われる「指定カースト」の人々もいます。農村部では、上位カーストと同じ井戸を利用したり、ともに食事をしたりすることが許されず、同じ寺院に参拝することも許されていません。

 ダリットはインド全国民の2割弱、後進カーストのシュードラは5割弱いると言われています。


 カーストは親から子へと受け継がれ、結婚も基本的に同じカースト内で行われます。カースト間の移動は認められていません。ただ現在の人生の結果により、次の生で高いカーストに上がることができるとされています。現在のカーストは過去の生の結果であり、それを受け入れて生きるべきとされ、カーストはヒンドゥー教の根本的な世界観である輪廻転生と結びついた社会原理です。

 カースト制は世襲的に細分化された職業に結び付けられており、各階層の人々はそれぞれの階層にとどまるようにされています。例えばダリットの多くは、ゴミ回収や清掃、食肉処理業などへの従事しか認められておらず、その多くは貧困状態におかれたままとなっています。
 

 現在インド政府は、貧困の解消を最優先課題としています。またシュードラやダリットあわせて、半数以上が被差別カーストであり、大票田として彼らへの優遇策を次々と打ち出しています。政府は公共事業関連の仕事や議会の議席、大学の入学枠などを下層カーストのために確保しています。例えば下層カースト出身の学生に対する公務員、国営企業職員の優先就職枠は、1950年では20%だったものが、93年には49.5%にまで引き上げられています。一方優遇の対象外の人は、これは逆差別だと反対しています。

 ただ新しい産業であるIT業界には、このような優先就職枠も、下層カーストに対する就職差別も全くありません。インドのIT業界が完全に実力主義を貫けたことは、インドのIT業界を発展させた要因と言われています。


 さらに、指定カースト出身の政治家、役人、判事なども増えてきています。1997年にはインドではじめて指定カースト出身のナラヤナン大統領が誕生しており、06年には最高裁長官になったK.G.バラクリシュナン氏もそうでした。

 最近選挙が行われたウッタルプラディシュ州の議会選挙では、ダリット出身の女性マヤワティ氏が率いる大衆社会党(BSP)が同州で21%いる最下層のダリットを中心にイスラム教徒と上位カーストの支持を集め、403議席中206議席を獲得して勝利しました。


 現在は、1950年の新憲法でカースト制に基づく差別は撤廃されていますが、カースト制そのものの廃止は明文化されていません。

 今日カースト制度は目に見えて弱まってきています。特にカースト毎のコミュニティーが存在しない都市部ではカーストの影響はほとんどなく、自分の属するカーストを知らない人すらいます。ただ農村部では、カーストに基づく生活規範や差別が今でも根強く残っています。

 異なるカースト間の結婚はヒンドゥーの世界では許されず、特に女性が自分より下位のカーストの男性と結婚することはほとんどありません。しかし最近では恋愛結婚も増えつつあり、都会では異カースト間の結婚も増えています。インドでよくある花嫁・花婿募集の広告で、「カースト不問」という言葉が入ることも見られるようになってきています。


 一方差別を嫌って集団でキリスト教や仏教に改宗するケースも見られ、不可触民出身で独立インドの初代法務大臣を務めたアンベドガル博士は、不可触民数万人を率いて、集団で仏教へと改宗するなどしています。





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