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8.インドの外交:印米関係 今回はインドの外交で、印米関係についてまとめておきます。 アメリカはインド独立以後、ソ連や中国など共産圏諸国を封じ込める世界戦略のもと、南アジアにおいてはインドをパートナーにしようと考えていました。しかし、非同盟政策を展開するインドはアメリカにとって協力関係を築く相手国とはならず、アメリカは結局パキスタンをパートナーとして選択しました。パキスタンは1954の東南アジア集団防衛条約や、1955年のバグダッド条約といった米国主導の防衛条約に加盟しました。 これに対してインドは、1955年に訪印したソ連のフルシチョフ第一書記が、「カシミールはインドの一部である。」と発言にみられるように、ソ連との関係緊密化を進めていきました。 60年代に入ると、1962年10月に印中国境紛争が起き、中国との関係悪化がピークに達しました。この印中国境紛争で劣勢に立たされたインドは、同年11月に、アメリカとの間で軍事援助協定を締結し、両国関係は改善されていきました。また1965年の第二次印パ戦争で、アメリカはパキスタンを支援しなかったこともあり、パキスタンはアメリカと離れ中国へと接近しました。 しかし1966年に入ると、インドは民族解放の立場からアメリカによるベトナム戦争拡大を批判し、印米関係は急速に悪化していきました。この年アメリカは対印援助を打ち切り、世銀はルピーの対ドル切り下げやその後の援助に関する非公式の約束を反故にしました。この経験により、インドのアメリカやIMF・世界銀行に対する強い不信感が形成されることとなりました。 70年代に入って、1971年7月のキッシンジャー訪中で米中和解が進み、米中対ソ連という構図ができました。一方インドは1971年8月にソ連との間で、「印ソ平和友好協力条約」を締結しました。この印ソ条約は、インドが非同盟政策に決別したか、と言われたほど、相互防衛条約的な色彩が濃厚でした。 その後80年代までの印米関係は、パ米関係とのシーソー関係にあり、一方が良くなれば他方が悪くなるという状況が続きましたが、大局的に見れば印米関係は低調でした。 その後1979年イラン革命とソ連によるアフガニスタンへの侵攻がおき、パキスタンは米国にとって重要な国となりました。米カーター大統領は、1980年の大統領教書においてパキスタンを「前線国家」と宣言し、4億ドルの軍事援助を申し出ました。しかしアメリカの対パ援助はパキスタンの対印軍事増強に振り向けられているとしてインドはアメリカを非難するなど、印米の関係はよくありませんでした。しかし1988年のアフガン戦争の終結により、米ブッシュ政権は対パ援助を停止しました。アフガン戦争の終結は、パキスタンがアメリカにとって有していた地政学的な意味を喪失させたのでした。 一方これを契機に印米関係は改善を見せ始め、1990年ケイリー国務次官補のカシミール問題でインド側の主張を支持するという発言で決定的となりました。この発言は、アメリカはパキスタンからインドに、政策の力点をシフトさせつつあることを示したものでした。 その後印米関係は少しづつ改善してきましたが、1998年のインドの核実験で一挙に険悪な状態となりました。しかし印米高官による戦略対話を通じてこうした事態は打開されていき、最終的にカーター以来22年ぶりとなる2000年3月のクリントン訪印をもたらすことになりました。この流れはブッシュ政権にも引き継がれていきました。2003年の9.11のテロ発生で米国はパキスタンとの密接な関係が復活しました。ブッシュ政権は「並行外交」という外交政策へ転換し、印パ両国ともいい関係を築くというものですが、その実はインド重視政策でした。 2006年のシン首相の訪米を国賓級の待遇で迎え、米印共同声明でも、両国関係をグローバル・パートナーシップに格上げするなどなされました。さらに2007年8月に印米間で最終合意された「原子力の平和利用に関する協力協定」では、インド側に極めて有利な条件を与え、パキスタンに対する姿勢と差を付けるものとなりました。 印米関係は、経済的なつながりなどで双方にとってますます重要な関係となっており、かつての犬猿の仲から、「最良の友人関係」へと変貌しています。 |
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